【もおすけ日記】ようやくヘリが飛ぶ!
お客様も出発されて、掃除も済んだ静かな山荘の朝。
そこに、どこからともなくプルルルル…と呼び出し音が。
すると、涼しい顔して
『ハイ!三俣山荘でございます♪』と、エプロンのポケットから子機を取り出し
電話係に徹するオンナ・もおすけでございます。
朝に晩にと,あまりに普通の顔してポッケから取り出して話し始めるので、
皆からは『ドラえもんのようだ。』と言われましたが。
だって、これが一番便利なんだもん。
皆さんお怪我などされていませんか?
もおすけのように怪我しちゃダメですよ。
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2011年 7月30日~8月5日
連日、これでもかって言うくらいにヘリが飛ばない。
正確には、ヘリが飛べない。
のだ。
山の上が晴れていても、ヘリポート上空が霧がかかって飛べなかったり
ヘリポート自体にヘリが来られない状態の時も。
ケ:『こうも続くと、来ないのが普通な気がしてくるよね。』
.
ほんとに。
そんな気にさえなってくる。
でも、水晶小屋への荷上げが出来ないのは、相当深刻な状況。
加えて水晶小屋へ食材を供給しているこの三俣山荘も、食材が減りつつあり
深刻な状況になりつつある。
そして、私の足にも変化が。
これまで痛みが全くなかったのに、ここに来て痛い所が出て来だした。
それを医局の先生に伝えると。
先:『ギプスが当たっているからでしょう。』
と。
そうなんかな?と思いながら、ギプスが当たらない様にガーゼを当てて下さるも。
でも。
違う。
ギプスのせいじゃない。
ふくらはぎの外側が、中から痛い。
そして内くるぶしの下も、痛くなってきだした。
奥:『大人しくしときなさいって言ってるのに、動き回るから~。』
とも言われたが、歩いている時、動いている時。
この痛いところに、負担はかかっていない。
自分の中で、どの動きで負担がかかっているかいろいろ思い当たってみるも
見当がつかない。
あるとすれば、一番可能性が高いのは“和式トイレ”だ。
実際これが、一日の動きの中で足首に一番負担がかかっているように思う。
.
標高が高いと痛覚が鈍る。
と言うもおすけの仮説が正しければ、むくみまくっていた足のむくみが引き、
むくんでいて分からなかった本来の(!?)痛みが、出てきだしたのか。
今まで全く痛みがなかっただけに、今になって少し心配になってきました。
.
そして、今日もヘリは飛ばない。
防災ヘリの前に、荷上げのヘリが飛ぶと思って毎日様子を見ていたのだが。
来る日も来る日も、飛べないのだ。
怪我をしてから、かれこれ11日が経つ。
U:『ヘリが飛ぶ時には一度降りて、出来れば診てもらった方がいい。』
と、初診で言って下さっていたU先生。
既に下山されているが、まさかここまで延びているとは思っていないだろう。
もちろん奥様も、私達もだった。
そして軽い痛みよりも、靭帯の様子が心配になってきた。
切れてから、変なくっつき方をしてはいないか。
大きな骨折ではないだろうけど、ヒビとか入ってるの?
だんだん心配になってきたのと同時に、荷上げヘリはいつ飛ぶのか
予測がつかない天気予報が続く。
.
結局、医局の先生・奥様と私で、明日荷上げヘリが飛ばなかったら
防災ヘリで下山して、病院へ搬送→診察 と言うことに決まった。
医局の先生には、紹介状の準備をしていただく。
で、毎晩『明日は下山かも。』と、化粧品や寝具を出し入れしていた毎日だったが
『さすがに今夜が最後よ。』と言いながら、布団に入る。
寝の体勢に入ったと同時に、すーぴーとカワイイ寝息が聞こえる もっちや
私と同じく、朝は弱いくせになかなか寝ないで起きてストレッチなんかしているケイちゃん。
21時になると『あ!もう寝る時間ッ!!』と、誰よりも早く床に就くたかちゃん達と、
楽しく寝るのも今日が最後?
次はいつ帰ってこれるの?
などと思いながら、床に就く。
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2011年 8月6日 快晴
K:『あ。 晴れてる!今日は飛びそう!』
Kさんの声で起きる。
従業員部屋のカーテンを開けると、空は久しぶりに明るい。
槍の稜線もくっきりと見えた。
今日は飛ぶかも。
朝食時、今日は荷上げヘリが飛べそうだから、とみんな準備に追われる。
もちろん私は、身支度をする。
そして約一ヶ月ぶりに、水晶小屋へ向かってヘリが飛んだ。
水晶小屋に二回。
三俣山荘に二回。
二回目は、人送。
つまり私が乗って、雲ノ平・水晶へ荷上げ&荷下げで巡回し、
七倉のヘリポートへと降りる。
ヘリが飛んできてもの凄い爆風の中、乗り込む。
も:『ニッシー、色々ありがとうね。迷惑かけちゃってごめんね。』
と、今回荷上げのヘリ誘導を初めて任され、終始緊張して乗り込む時まで間近にいた
ニッシーに礼を告げながら、シートベルトを締める。
飛行機よりも離陸感が薄いふわりとした感覚で、上空に浮いたかと思いきや
三俣山荘が眼下に見え、皆が展望食堂のテラスから手を振ってくれていた。
あっという間に、そしてどんどん小さくなる三俣山荘の赤い屋根と皆。
奥様もケイちゃんやもっちやKさん・たかちゃんもみんな手を振ってくれている。
すっごく寂しくって、涙が出そうになった。
.
せっかく皆と仲良くなれたのに。
ベテランもっちや、同期のケイちゃん・たかちゃん・ニッシー。
甘いものが出ると、最高に嬉しそうなにっこり笑顔なる伊藤さんに
毒舌では誰も敵わない(!?)、それでいて愛情あふれる奥様。
新しく来たバイトさん達に、水晶小屋の圭さん夫妻にナミちゃん。
三俣山荘の日々があっという間の出来事のように、あっという間にヘリは高度を上げ、
山荘から離れていってしまいました。
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でも、そんな気分の中でも ヘリからの景色は素晴らしく
目を見張るものがありました。
ヘリコプターは白馬山荘入山時で経験済みですが、その時よりも視界がよく
特に空中からの雲の平の景観は、正に『雲上の庭園』でした。
も:『ああ、晴れた日に休暇でここに来たかったなぁ。』
心からそう思いました。
ヘリの中から数枚写真を撮ったのですが、それはまた次回に。
こうして私は防災ヘリ&県警の皆さんにお世話になることなく、
ギリギリのところで、無事に下界へと降りることが出来たのでした。
N航空の皆さん、Eさん、岡山大&香川大の医局の皆さん。
スタッフの皆。
そして毎日、気を揉んで下さっていた奥様。
本当にありがとうございました。
そして沢山ご迷惑をかけてしまってごめんなさい。
もっと働きたかったです。
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そして、下界で迎えに来て下さっていたHさんの車で、信州大付属病院へ。
『病院内は広いから。』とここで、車椅子を勧められる。
も:『今日は、一番高い風景と低い風景を目にしているなぁ。』
と思いながらも、ボランティアの方に車椅子を押して頂く。
そして、
も:『やっぱり私は高い風景の方が好きだなぁ。』
と、認識する。
車椅子からの風景って、水面に近いカヌーからの風景に似ています。
幸い骨に異常はなく、骨折・ヒビもないとの事。
まずは少しだけホッとしました。
でも、急患扱いで診て頂いたので、月曜日に整形の専門の先生に診てもらう事に。
そして、まだまだもおすけの象さん足(捻挫の痛み)は続くのです。
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コメント
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■もっくんへ
そうです。下界から更新しておりました~。
それにしても、暑い!
暑くて倒れそうですーーー。
下界ってこんなに暑かったっけ?と思うほどで
すっかり山体質になっておりました。
早く、お山の上に戻りたいです。
投稿: もおすけ | 2011年8月14日 (日) 15時15分
やっぱり下山されてたんですね・・・。
ただでさえ、山を歩き回っていたい人がこの時期にリタイアはさぞかし無念でしょうね。
ただ、今は治療に専念して後遺症を残さないようにしてくださいね。
また、山の上で会いましょう。
投稿: もっくん | 2011年8月14日 (日) 10時58分