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2012年2月25日 (土)

【もおすけ日記】厳冬期・ソロ八ヶ岳テン泊山行・1

先日の丹沢・塔ノ岳山行。下りの大倉コースは大層楽なものでした。

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も:『これなら大倉コースのピストンでよかったじゃん。』

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だって今日は、千葉まで行かなきゃ行けないハードスケジュールなのだから。

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さ:『ピストンってつまんないから、やなんだよ。』

も:『だからって、わざわざ時間のない今日にヤビツからでなくても。』

さ:『いいんだよ。オレは登りたかったんだ!』

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と言うさぶちゃんのザックは、ボッカの為にシュラフなんか入ってて軽く20kgは超えていました。

こんな時に、とは思いましたが先日私もさぶちゃんの思いを実感。
もおすけです、皆様こんばんは。

そう。今回は、満を持しての“厳冬期・テン泊ソロ八ヶ岳”のご報告です。

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前回の塔ノ岳から一ヶ月近く。
その間私は山に全く行けませんでした。

こうなると、やさぐれる。

自分では気が付かぬうちに、やさぐれる。

体はなまるわ、体力は落ちるわ、ストレス溜まるわ。
しまいにゃ『あー、こうして私山に登らなくなっちゃうのかなぁ。』なんて思ってしまう程。
さぶちゃん、いっちゃんとメールでやり取りしても、気分が滅入ってローテンション。
“すね寝”する始末です。

嗚呼、さぶちゃんの気持ちがわかる。

たかが3週間でそうなってしまう私。
大袈裟な、と皆さんお思いでしょうが、その位 私には山が必要の様です。

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2012年 2月18日 雪

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仕事が終わって、そのまま帰宅せずに車を飛ばす。
目指すは八ヶ岳登山口・美濃戸口。

こう書くと、いつものようにワクワクしてるとお思いでしょうが、さにあらず。

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・夜で、暗くてわかりにくい道。
・真っ暗で鬱蒼としてて、怖い林道。

これだけで十分、行く気が失せます。
就業終了時間が近づくにつれ、『嗚呼、行くのかぁ。大丈夫かなぁ。いっそのこと
明らかに行けないくらいに雪が降ってくれたら良いのに。』

などとネガティブなことを思ってしまう。
まるで予防接種の日に『熱が出て、学校休めたらいいのに。』と願う小学生。
(実際健康そのものだった私は、発熱で注射を避けられたためしがない)
読んでいる皆さんは、行きたいんだか行きたくないんだか、わからない事でしょう。
自分でも思います。

上記の不安要素に加え、

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・一人で行って、ホワイトアウトしたらどうしようか。
・登山道の出ていない雪道、道迷いしたらどうしようか。
・家にいたって寒いこの季節、薄いテント一枚の夜空、何で過酷なことわざわざするのか。

どう考えたって、楽しみよりマイナス要素の方が多い雪山のソロ山行。
それでも何故行くのかといわれれば、『人に頼らない登山』が出来る自分になりたいから。
いつでもどんな時でも自分で判断できるようになれば、不安も少なくなるし自信にも繋がる。
行ける山だって増える。

なんて思うものの、ソロ山行の出発前はいつも最高にブルー。
誰かと一緒だったら、それだけで楽しい山なのにな。

などと思いながら、ブルーなまま車を飛ばす。

あ、ちなみに日常では人サマに頼りまくりです。
ジャムのビン一つ開かないだけで『今度誰か来たら開けてもらおう♪』と言うほどの他力本願。
なんでも一人で出来ちゃうほど逞しいオンナではありませぬ。

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閑話休題。

私の大きな不安要素・登山口までの運転は、予想通りに一回迷ったものの
なんとか到着できた。

ようやく気分も少し上向き。
前回、阿弥陀岳分岐で出会ったお兄さんの言葉、『折角だから、楽しんでくださいね。』
という言葉を思い出す。

そう、どんな状況も楽しまなくっちゃね。

寒いながらも大好きな車中泊で、一夜を過ごす。

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5時に起床。
夜中から朝までの間に車がかなり増えていた。

起きてお湯を沸かす。
車の暖房を入れる。
暖かい時間も これで当分ないのだから(一泊だけだけど)、と思いながら。

朝食を取り、食後のコーヒーを飲んで準備をする。

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今回の一番の目的は硫黄岳。
前回、雪の赤岳を登ったから、今回は硫黄岳に行ってみたい。
そして行者小屋でのテント泊。
有人小屋でない場所でのテント泊に、トライしてみたい。

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入り口でコンパスを合わせ、出発!
これまた初めての南沢ルートで行者小屋を目指す。
このルート、個人的には赤岳鉱泉北沢ルートより歩きやすくって好きです。
・・・って、雪が多くて岩が隠れてるから歩きやすいだけかな。

コースタイムより若干早い時刻で行者小屋に到着。
まずはテント設営を。

と、ここに来て事前の準備を怠ったことを少し後悔。
割り箸ペグを作っておかなかったのだ。
わかってはいたんだけどね(後悔することを。)

この時、気温-18℃。
寒いなんてもんじゃない。
手袋をしてても、指先の感覚がなくなる。

ダメ人間の自分に反省しながら、割り箸と麻紐でペグを作る。
そしてなんとかテント設営。
雪が入り込まないように、テント内に荷物を入れる。

今回はワタクシ、岳人二月号で書かれていたことをきちんと実践して、
きちんと雪山登山が出来る人になろう、と言う目標があるのだ!

とか言いながら、風がないのをいいことに適当な雪の塊をアンカーにして張り綱を張る。
いいのか?こんなで(笑)。

ザックの中には、食料とサーモスだけ入れて再出発。
寒さのあまり、時間が押してしまった。

AM11時だ。
でも今日のアタックは、赤岳。
天気がいまいち。時間も押してる。
まあ今回の一番目標は硫黄岳だから、無理のない程度で登っていこう。

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真冬の八ヶ岳は半端じゃない寒さです。
よく“冬の八ヶ岳は冷凍庫みたい”といいますが、冷凍庫じゃないです。
業務用冷凍庫です。
昼間でも-20℃近いここは、景色も業務用冷凍庫そのもの。

120218_                               なんと寒々しい景色だろうか。

今回は、本当に一人。
前回のように、前に人が歩いているなんていうこともない。

周りの景色をなるべく見るようにして(記憶させて)歩く。
トレースはしっかりあるけれど、冬の天気はいつ急変するかわからないからね。

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稜線に近くなったら、やっぱり風が強くなってきた。
12月の時とは、明らかに雪の量も増えている。

そして空はどんどんグレーになってきた。

さっきまで綺麗に見えていた阿弥陀岳も、ほらご覧のとおり。

120218_3                             不安色いっぱいの風景でございます。

前を見れば、角度を強めた斜面。

120218_2                            でもまだこの辺りはましでした。


寒い。

『寒いと凍傷になってることに気付きにくいから、気をつけてチェックするように。』

と書かれていたけど、風が冷たすぎて頬の感覚がなく素肌が露出していないか、
バラクラバできちんと覆われているか、なんてわからない。
その位寒いのだ。

指先の感覚だっておぼろ。

先に進めば、握ると指の体温を奪われるほどの冷たい鎖が(それでも雪に埋もれずあるだけ有難い)。

そう、ここから正念場の始まりです。
                      
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以前の吹雪の西穂独標の時に比べれば、危険さは少ない。
でも、足運びだけはきちんとしなきゃ。

そうこうするうちに、ここからもう少し登れば階段というところに着いた。

その先に岩場。右に巻き込むように登っていくと山頂。
ただ、空の色がいっそう暗くなってきた。

私の先を行っていたおじさんは、ここで引き返すと言う。

PM13:18.

山頂まで登って降ると16時。
時間的にはまだ暗くならないけれど、14時半を回ると天気は急変しやすい。
特に荒れやすい。

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少し迷ったけれど。

どこまで出来るか行ってみよう。

そう思い、誰もいない雪山の先を進むことにしました。

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標高を上げていくと、風はどんどん強くなってきた。
そしてもちろん寒くなっていく。

久しぶりの山で、テン泊装備を担いできた疲れがここにきて足に来る。
ああしんどい。

ただ、前回の時のような心細さは、不思議なことにあまりなかった。
風が強くても、誰もいなくても先に進める確信もあった。

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でも。

雪も強まり、空は更に鈍色となり尾根筋のここは風が強く、
振り返ると自分の歩いてきたトレースが、もう既に消えかけていた。

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比較的なだらかな尾根筋。

トレースがなくなると、帰り道がわからないばかりか、踏み固められていない所を歩けば
この傾斜・この風では大事故につながる。かなり危険。

そう思いつつも、この風、この雪量なら登り切れそう。
でも時間が際どい。

いろんな事を考えていたら、前方に降りてくる人影を発見!

120218_4_2                              殆ど見えないでしょうが、岩影に人がいます。

なんとか岩場まで登り、話しかける。

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も:『あと頂上まで、もう少しですよね。どのくらいですか。』

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わかっていても、聞きたいものです。
おそらく30分、この天気なら45分くらいか。

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お兄さん:『30分から1時間くらいかなぁ。』

も:『やっぱりそうですよね。』

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そして1時間くらいと言われた時点で、山頂の天気のハードさが伺える。

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降りよう。

素直にそう思えました。

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も:『降ーーーりよっと!無理しても仕方ないもんね。ありがとうございます。』

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皆にも私にも、きちんと無事に降りて帰る義務がある。
『お母さんを悲しませるようなことをしてはいけない。』と、何故だか一番にそう思ってしまいます。
(父と思わないのはナゼダロウ。お父さんゴメンョ。)

9合目あたりで撤退です。

     120218_1_4                               この先の景色はまた次回に。

 

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『ここが一番 風がきつい。』と言うお兄さん達二人は、地蔵尾根からのコースでした。

遅い私はお二人に道を譲り、慎重に降っていきます。

さっき歩いたアイゼンの後はすっかりなくなっていて、この判断は正しかったと思いました。

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も:『あーー、テントに着いたらあったかいココアを飲もう。』

下ると決めたら、考えることもすぐに変わります。

ついさっきまでは、この先の道の状況(この後岩場くぐったよなぁとか、あそこの巻き道 風が強くてもいけるかな、とか)や
何度も時間計算とか天候の予測とか真剣にしていたのに、

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も:『あ、帰ったらチートス食べよ。』

とか、

も:『カフェ・オレとハーバーもいいなぁ。この時間ならシュラフにくるまってお昼寝もできるな。』

とか、すっかりお気楽なことばっかり考えています。

それでも事故は殆どが下りに起きるし、風でバランスを崩すと転倒→滑落なんて一瞬なので
気を引き締めながら安全な所まで慎重に。

標高が下がれば、“やっぱり”風は弱まって。
ようやく辺りの景色も目に入ってきました。

稜線上を歩くお兄さん達。
やっぱり山って男の人の方が絵になるなぁ。

120218_5


樹林帯の中に入れば、体も心も一安心。
寒さもずいぶん和らぎます。
お兄さん達は、撮影&小休止をするということでシャッターを押してあげました。
そしたらもおすけのカメラもシャッター押してくれました。

120218_6                          上から撮ると、愉快な人形みたい。

相変わらず、ちっとも絵にならないわね 私。

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お兄さん達のお蔭で、怖い下りも心強く降りることができたのでお礼を言ってテント場に戻る。
着いたらホッとして、アイゼンも外さずベンチで温かいお湯&お菓子で休息。
そしたら先述のお兄さん達も到着し、少し話をしました。

なんでも今日は、日帰りで地蔵尾根→赤岳山→文三郎尾根→下山で帰宅とか。
やっぱり男の人は体力が違うなぁ。

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兄:『いや、女性一人だけでテン泊山行も充分すごいですよ。』

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と言ってくれますが。

いえいえ。

私の中では『ソロも別に怖くないし、一人でも何処でも行けちゃいます。』的な女性は凄いと思うけど、
私はいつもビクビクしながら来てるんですー。
女性で・ソロで・冬山で・テン泊、って言うだけで、何かと誤解されがちですが
車で出発して登山口に着くまでも、既にビクビクしながら運転してる状態だし。
はっきり言って、エンジョイ&満喫ってのとは程遠い。

それでもこうして、見知らぬ人と今日の山登りの話をしたり、テントの中で熱いカフェ・オ・レを飲むと。

やっぱり来てよかったな、登れてよかったなと思います。

考えてみれば、この日は初の“撤退”でした。

でも、悔しさと言う感情は微塵もなく、あそこで撤退を決めた判断が正しかったと思える自分に
少しだけ、ほんの1%だけ“ちゃんとした”クライマーになれたようにも思えました。

テントに戻ってからは、おやつ&カフェ・オ・レ、お昼寝、夕食と今回の冬山山行の反省点や
装備の改善点を考えたり。

山頂までたどり着けなかったけれど、それ以上の充実感があった一日でした。

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夕方五時。

全ての水分は凍っていました。

120218_7 
                           保冷バックに入れてた卵は凍って爆発。
      

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.山登り」カテゴリの記事

コメント

■issyさんへ

いつも読んでくださり、そして初コメントありがとうございます!
硫黄岳から横岳とはすごいですね。横岳周辺危険じゃなかったですか?
厳冬期の横岳は、憧れでもあります。

それより、鉱泉。
私ネタで盛り上がったとは。
何だかとっても恥ずかしいです。
その方は私の知り合いかなー。
なんにせよ、これからも宜しくお願いいたします♪

■よねちへ

自分でも家に帰って写真見ると『よくこんな天気の中、登ってたな。』って思います。
その位、この景色の中にいる時は夢中(必死)なんだよね。
でも終わるとまた行きたくなってしまう。不思議なもんです。

ぎょえ~っ!!大丈夫ですか??
ブログ見てるだけで怖いわぁ。。。本当に気をつけて下さいね
夏山も冬山も怖いですね。
一人ぼっちって私には怖くてむりかも
早く暖かくなってほしいですよね!!!

はじめまして、いっしーと申します。
いつも楽しくブログ拝見させていただいております。

八ヶ岳行ってきたんですね
私も20~21日と硫黄岳〜横岳を登って来ました
私の場合は鉱泉小屋泊でしたけど;
ソロテン泊、憧れます♪

それと小屋で相部屋だった方がもおすけさんのことを知っており
2人でちょっと盛り上がりました(笑

さすが全国区です!

いずれ山で会えることを楽しみにしております。

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