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2012年5月 8日 (火)

【もおすけ日記】白馬岳事故に想う

Monkey magicの“Together”がとってもよく似合う松本の朝です。
皆様おぱよう、おさるのもおすけでございます。

更新が滞ってしまったのは、急遽神戸の友人・宮りん夫婦が遊びに来てくれたこともあったのですが
どっちを書こうか、ずっと迷っていたからです。

でも、どうしても素通りしてしまうことが出来なかったのは、
やっぱり私が大好きな、白馬岳で起きた事故だからかもしれません。

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ニュースを見た母から心配して電話があり、私はその事故を知りました。
母の曖昧な情報で“雪崩”も起きてると聞いた私は、 室堂へ山ボードに行ったさぶちゃんにメール、

『大丈夫?』。

幸い悪天候で、既に下界に降りていたさぶちゃんから電話で返事をもらって安心しましたが。

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翌日の地元紙・信濃毎日新聞には、視線を逸らすことが出来ないほどの痛々しい写真が載っていました。

県警のレスキューへリで、救助隊の方が亡くなられた方を抱え吊り上げている様子を
上から見下ろすアングルで空撮した写真。
あまりに衝撃的なその写真を見ていると、横からフクちゃんが静かに一言、

フ:『アイゼンとか外してるね。』

視線を下に移すと、真っ白な雪の上には登山者のアイゼンやピッケル、ザックが散乱し、
そしてこれから収容するであろう 亡くなられた登山者の姿もはっきりと見て取れました。

その圧倒的なまでの写真の様子と記事の詳細を読んでいると
なんだかあまりに切なくて、涙が出そうになりました。

私の大好きな白馬山系。
晴れていたら、最高の景色の場所なのに。

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春山は、晴れれば夏山、でもひとたび天候が荒れれば冬山の形相と化します。
そういった意味で夏山より天候の予想が難しいとも言われている様です。
私達自身も、去年と今年の同じ日程でそのどちらも体験し、あまりの違いに驚きました。

今回はしっかりとした装備で登られていた様ですが(それだけに残念でなりません)、
よく山岳事故で言われるのが

何故、防寒対策が甘いのに登ったのか。
天気が荒れ始めた時点で、どうして引き返さなかったのか。

などですが、私如きが言える立場ではありません。
そして、上記の選択をしてしまった気持ちも、わかる気もするのです。

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白馬山系は、岩場などの岩稜帯が少ない分、登りやすく危険が少ないと思われがちです。

ですが、地理的に言うと北アルプスの中でも最も日本海に近い北信。
同じ北アルプスの南に位置する、蝶ヶ岳と北の白馬岳とでは
同じ時期でも雪の量や気象状況、そしてその変化の激しさにも相当な違いがあります。
そして日本一の大雪渓。

天候が穏やかで花が咲き乱れている時の山登りでは、イメージしにくいかもしれませんが
これだけでも十分に、他の険しい山々と同等レベルのハードな山なのです。

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支:『白馬岳はなぁ、実は危険な山なんだよ。』

 

と、楽しそうに受付を済ませた登山客の背中を見ながら、支配人がよく言っていたのを思い出します。

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私が白馬山荘で働いていた時。

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温暖な地域に住まれている方ほど、軽装で登って来られる傾向が強いと感じました。

日常が暑いほどの気温だと、山の上の“寒さ”がどうしても想像しにくい。
インターネットで山頂の気温を数字で表記されていても、今、自分が暑いとイメージが沸かない。

『6月に、フリースなんて大袈裟か…』

などと思ってしまう人達を、私は責められません。

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山荘で、ストーブに当たりながらホットコーヒーをすすりながら見る
夕方のニュース前の甲子園の野球中継。
神戸でうるさいほどの蝉の声を聞きながら、蒸し暑い部屋で甲子園中継が映ると
『ああ、この画面を見てるだけで更に暑い…。』と思っていた映像なのに。

寒い山の上で見ていると『多分、向こうは暑いんだろうなぁ…。』と頭では思っても
感情がついていかないのです。

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イメージできない。
なんと貧しい想像力。

だから、南国の方達が装備が手薄になってしまうのはわかる気がするのです。
実際、九州・沖縄・四国など暖かい地方のお客様は『こんなに寒いと思わなかった。』と仰り、
売店で慌てて手袋・フリース・シャツなどを買われる光景が何度となくありました。

人は暑さ・寒さに耐えられる体なだけに、温度差のイメージに鈍感なのかもしれません。

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そしてもう一つ、非常によくあったお客様とのやり取り。

アイゼンを持ってこなかったお客様にレンタルをお薦めすると、悩まれる方の殆どが

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『荷物が重くなるから…』

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と借り渋る事でした。

使わなかったら無駄な荷物になって、ただ重いだけ。
1gでも軽くしたい、とは女性客と中高年の方々が必ず言う台詞でした。
勿論荷物が重くなりすぎてバテてしまうのも危険です。

でも、私は必ず付け加えました。

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も:『今日の雪の状態なら、降りれる人ならアイゼンなしでも降りられるでしょう。
   でも、雪渓で落石が起きて急いで横に逃げなくてはいけない時、アイゼンがあるのとないのでは
   逃げるスピードが全然違ってくると思います。』

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と。
そして、こうも言いました。

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も:『もし使わずに降りられたとしても、それはそれで“無事に降りられてよかった”じゃないですか。
   アイゼンの重さより命の重さの方が、ずっと大きいと思いますよ。』

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本当は、アイゼンを装備してもバテない体力が必要です。
ピアノの練習を何ヶ月も全くせずに、いきなり発表会(本番)でミスなしで演奏するのが難しい様に、
事故なく3000m近い山を登る為には、最低限の事前の足慣らしは必要なのです。

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私達は、自分の道楽で山に登っています。
そんな道楽のせいで、家族や友人達に多大な心配をかけています。
だからこそ、私達は絶対元気に“ただいま!”と家に帰らなくてはいけないのです。

心配する家族。
捜索に当たる救助隊の方々の苦労。
それを心配する救助隊員の家族の方々。

楽しいはずの山での事故は、本当に切なく悲しいばかりです。

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今、お店にも“これから山を始めます!”と新しく装備を揃えるお客様が大勢いらっしゃいます。
そんな方達のお顔は、全員と言っていいほどキラキラと輝いていて
接客する私の方が、ワクワクしてしまうほどです。

日常では、体験することの出来ない最高の世界。
山の上には、いつだって最高のご褒美があります。

山での思い出は、楽しい事だけがいい。

そうあるためにも、装備・体力・知識・技術。
これらをきちんと備えて山に行かなくては、と改めて自分に言い聞かせた今年のG・Wの山でした。

皆様も、どうぞ無理をなさらずに。
そしてお山に登ったら、全員笑顔でお家に帰りましょうね。

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日記」カテゴリの記事

コメント

■もっくんへ

本当に。
多々の事故は残念でたまらないです。

今回の事故は、今までの中でも一番自分の中では教訓になった感じがします。
そろそろ無茶をすると危険な目に遭うよ…という。
引き返すのって、残念じゃないですか。
でも、命以上に残念なものはないですよね。
そう思います。

せっかくお店に来てくださったのに、会えず残念です。
今日はお休みで、山菜届けに夕方ちょろっと寄っただけでした~。
次回休みは10日です。
下山後に会えるといいですね。

■しゅーころさんへ

ビンゴ、まさに正解です!
いろんな噂が飛び交っていたようですが、実際はきちんとした冬山装備で臨まれていたようです。写真の服装でも、冬山装備にゲイター、アイゼン、ピッケルとされていたようでしたから。
ガスやツェルトも持参していて、ツェルトに包まっている方もいらっしゃったようです。
ただ実際の所、あの高度、稜線上での風速は恐らく30mもしくは40m近かったと思います。
その中でザックから服を出し、ハードシェルを脱いで着てまたシェルを着るというのは実際不可能に近いと思います。
だからしゅーころさんの言うとおり、怪しいと感じた時点で着替える・引き返すと言うのが大切なんだと思います。

引き返すほうが距離が長くとも、標高が下がれば気象状況は必ず緩くなる。
ここを忘れてる方、多いのかもしれません。
標高を下げたほうが、確実に気象は穏やかに安全になってきますよね。
私も改めて肝に銘じておきたいと思います。

こんばんわ

先ほどもーちゃんのお店に顔を出したのですがご不在でした。

記事の件は残念な事故でしたね。
山を続ける以上はお互いに明日は我が身ですから気をつけましょう。
そんな事をいいつつ、明日から涸沢まで行って来ます。
天気、少し心配なので場合によっては横尾撤退のつもりでいます。


下山したらまたお店によってみます

ご無沙汰してます。

今回の事故、ショックでなりません。

雪山登ったことないですが、ちょっとコメント。

防寒対策が甘かったようにメディアからは報じられていましたが、チャライ格好で富士登山している観光客なんかとは違い、今回の事故に遭われた登山者なら必ず重装備されていると思います。
ただ、使われなかったのかな??って思うんです。
寒い時期でも、登山したり運動すると暑くて薄着がちの、運動して丁度いいくらいにしますよね。
怪しいと感じたら、やりすごさず、装備を変えていきましょうよ!!

地球温暖化もあるのか?この時期は大気が不安定になりますよね。
積乱雲が発達し、嵐・・・。
風は少なくても夏山も一緒ですよね。

白馬山系の、山頂や稜線は方角によっては風で雪が吹き飛び積雪少ないんでしょ??
そりゃ半端なく強風だと思います。

皆さん、気をつけましょう!!

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